あまり知られていない「バナナの意外な一面」をご紹介します。同じ芭蕉科の植物では、食用バナナの実のなる「実芭蕉」のほかに、「糸芭蕉」があります。外見は実芭蕉によく似ていて、地元の方も見間違えるほどですが、糸芭蕉の名前の通り、繊維がさまざまな用途に有効活用されています。世界共通の学名はMusa textilis(Musaはバナナに共通)で、「なんといっても、オレ繊維!」というニュアンスのネーミングです。海外では、一般にマニラ麻やアバカの名前で知られていますが、それも「よい繊維が取れるから」という理由で、植物分類的には間違ったまま、「麻」の名前が定着してしまったぐらいで、軽量で繊維強度や耐水性が高いために、船の係留用のロープなどにも使われてきています。
さて、この糸芭蕉の繊維ですが、実は日本の紙幣にも使われていることはご存じだったでしょうか? 日本の紙幣には、三椏と糸芭蕉が原料に使われています。みなさん、一度は「お札の洗濯」の経験があるはず。しわくちゃになっても堪え忍んでいて、アイロンを掛ければ、元型を取り戻しますよね。「あぁ~、やっちまった~!」とポケットを探ると、溶けて影も形もなくなっていた、なんてことにはならないのは、水に強いバナナのおかげです。
さて、話を沖縄に戻しましょう。1694年に、薩摩から和紙の製造技術が伝わったものの、沖縄の気候環境では和紙の原料になる、三椏、楮、雁皮といった植物はどれも育ちにくかった……。ということで、1717年に、琉球固有の和紙として芭蕉紙が生まれました。
そんな古を偲んで、オルタナティブファーム宮古では、今後、通常の体験メニューに加えて、紙漉き体験も始める予定です。そこにはもちろん、好きな金額を書いていただいて結構。今の目標は、〝逮捕〟される?ぐらいの上質な紙を生み出すことです(笑)。