姿を現してくれた美しい白蛇
先月号で、御嶽(うたき)空間を利用した『森の休憩所』の計画をご紹介しました。そこに座っている木々はあまりに立派で神々しく、美しい『癒しの小さな森』の雰囲気を醸し出しています。ただ、恐らくここ10年以上誰も面倒を見ていない荒れた状態からのスタートで、ひたすら清掃を続けました。
先日この小さな森で一緒にお茶をしたお客様から、『この素敵な畑・うたきに巡り会う縁があったということは、松本さんは宮古島に招かれてきたんだね』と嬉しいお言葉を頂戴しました。この時、昨年5月の宮古島赴任2日目から始めた、ある出来事を思い出しました。
~うたきの清掃~
宮古島プロジェクトの現地リーダー・川平さんの家の前のうたきが、諸事情あって醜い状態に晒されていました(※自社農場にあるうたきとは、別のうたきです)。私たち内地の人間が宮古島で新事業をスタートするにあたって、象徴的なものを感じ、私たちの手でうたき前を綺麗にすることを決めました。初めは廃車・廃タイヤ・廃材・生活ゴミなどの山に草木が生い茂った惨状で、「先祖代々大切に守られてきた神様の住む場所がこんな状態であって良い筈がない! 綺麗にしよう! 」と、それだけのモチベーションで動き始めました。腐敗臭が漂う中、ゴキブリがびっしりと張り付いた廃材の運び出しその他、無心で掃除し続けました。少しずつ綺麗になっていく状況を見て、“良かったね” って思いながら。そうしている内に自分の心の内の変化にも気づいていました。
「僕は掃除をさせてもらっている……掃除という行為を通じて、神事に参加させてもらっている……」そう思った・気づいた瞬間、体の内から優しい愛情に満ちた強烈なエネルギー溢れ出てきて、どうしようもなく涙が溢れてきました。たとえば人が人を好きになる遙かに理屈を超えた気持ちや、音楽を聴いて感情が溢れて涙するのと同じように、頭で理解している訳ではなく、ただ自然に沸き上がってくるエネルギーのようなものでした。ヨガ(心と体の統一、宇宙意識との一体化を目指す心身・生活習慣の訓練)では、何かに一心不乱に集中して我を忘れた時、人は煩悩・エゴから切り離され、無限に自由でいられ、無限のエネルギーを与えられると言われます。
やっている行為は地味でちっぽけな単純作業ですが、ハートがありさえすればいいんだって確信を持つことができました。同時に、宮城県に通った震災ボランティアの経験を思い出しました。汗まみれ・泥まみれになっての家財道具の運び出しや泥の掻き出しも、それ自体大したことのない行為でした。ただ「決して他人事とは思えない、何とか力になれるものならそうしたい」ひたすらにその想いをもって動き続けることで「ありがとう。もう一度がんばってみようって気持ちになった」って被災者の方が涙される姿を見て、僕も救われました。「掃除という行為を通じてハートを伝えることができた。これで良かったんだ」って気づいた瞬間でした。
その後、身を委ねるつもりで「崇高な仕事に仕えさせて下さい」って心の中で唱えた途端、右手がガタガタ震えだして抑えが効かない状態に陥ってしまったのには、自分でも呆れてしまいました。作業二日目には更にびっくりする出来事がありました。ふと気配を感じて上を見ると僅か2mほど上の木に白い大蛇がいました。長さ宮古の神様に喚ばれて宮古執筆プレマ宮古島プロジェクトリーダー(兼 農業生産法人(株) オルタナティブファーム宮古 代表取締役)松本 克也は2m以上、うねらせた体が3重に重なって、それは凄い光景でした。慌ててカメラを取りに戻って、一枚だけ撮りましたが、威厳に溢れ非常に美しい白蛇です。川平さん曰く、うたきには必ず守り神がいて、姿を現してくれたということはとても有り難いことのようです。
その後も綺麗に清掃・整地を続け、宮古島の母なる大地・琉球石灰岩の砂粒を敷き、琉球瓦で参道を囲い、ゆっくり場を整えていきました。大変でしたが、同時にとても嬉しい作業でした。
私はご縁を頂いて宮古島に来たのだと改めて感じ直し、私ができる役割を果たしていきたいと思っています。普段は真摯に畑作業です(笑)。
*一般に理解されないかもしれないこと、宗教・オカルトと混同誤解を招きかねない怖さも感じながら、実体験を言葉に表現してみました。