つい先日、思いかけないところから「サトウキビの生鮮出荷」が適うかもしれないきっかけを頂きました。小売店舗でお取り扱いいただけるようになると、おうちでサトウキビを齧って甘く爽やかなジュースがお口の中いっぱいに広がってニッコリと笑う、という私の理想が実現します。飲食店を営む料理人の方も興味を持って、ハーブ液にディップするようなアイデアをご提案くださいました。確かにローゼルや生姜・お塩などは相性が良く、プロの料理人が手がけるお品を想像するだけでワクワクします。
かつて「砂糖といえば白い粉」という認識しか持っていなかった私が、宮古島に来てサトウキビ栽培を始め、黒糖加工の手伝いをしながら加工技術を学び、黒糖の食べ比べなどを通じて、サトウキビに対する認識が一変しました。サトウキビは生き物・生鮮食品であり、栽培・収穫・焚き上げの加工の仕方などによって、製品の質は大きく変わることがわかりました。黒糖が苦手と言われる理由として共通する「えぐみ」はサトウキビの灰汁に起因し、糖度が高く新鮮なサトウキビを使って、製造の工程で丁寧に灰汁取りをすると抑えられることもわかりました。
一方で、上白糖への精製を前提とする製糖産業の国際競争の流れに巻き込まれて、生産性の向上を目指した工場への原料集約の政策が進められた結果、かつて各部落ごとに息づいていたシートー(黒糖)作りの文化・事業が生き残れない(経済活動として成立しない)状況に追い込まれてきたことを知りました。それと同時にTPP導入の流れの中で、補助金を前提にしたサトウキビ産業の将来が心配されてきました。
ショ糖成分だけを取り出した上白糖と比べて、黒糖やこくとうみつはビタミンやミネラル分が豊富に含まれるために自然な甘さと滋味に溢れる健康食品です。黒糖の良さが分かってもらえていないこと、また、宮古島の主幹産業でありながら、経済自立できていない現状の製糖産業についても、残念に感じました。
宮古島が誇る地域資源であるサトウキビ栽培/製糖に関して、シートー(黒糖)作りの文化の価値を島内外で再認識し、経済的に自立・持続・発展する形で復活させたい、という思いを強く持つようになったのは2年ほど前、私が宮古島に赴任して2年目の時でした。
具体的にはプレマ・宮古島プロジェクトが創造する価値として、「美味しい」だけの商品単体の魅力に留まらず、サトウキビそのものに関心・興味を持ってもらって、サトウキビの島・宮古島を好きになってもらうことに繋がっていってほしい、「美味しく・楽しく・学べる」体験型の観光・食育事業に着手することを考えました。
まずは「地元が元気なこと」が原点で、宮古島が持つ貴重な資源・資産を再認識し、伝統食文化を再評価し、独自文化に誇りを持つよう、地元の小中学生・高校生を受け入れた、職場体験・見学を計画しています。サトウキビの植付や収穫などの畑作業を体験してもらい、一緒にサトウキビを齧り、圧搾したジュースを飲み、焚き上げる途中のとうみつを味見し、作りたての黒糖を食べます。琉球王朝への献上品として黒糖が作られていた歴史、かつて使われていた農機具や圧搾機などの資料文献も紐解いて、宮古島のサトウキビ産業の基礎を築いた経緯を学びます。台風に強く、土地にあった作物の価値を一緒に考える機会にしたいと思っています。
その延長線上に、観光で島を訪れる方を対象として、宮古島でしか味わえない・体験できない付加価値を加えた食育事業として、商品販売のみの事業枠を超えた価値を提供していきたいと考えています。
「サトウキビは生き物です。生鮮食品です」と言いながら、最近は最終加工製品の製造・販売に偏ってしまっていました。冒頭のサトウキビの生鮮出荷のお話を頂いたのは、折りしも沖縄物産展に出展するために上京していた時のことです。物産展での販売は伸び悩み、やはり補助金に頼らない経済活動としては黒糖などの加工品事業は厳しいことを実感し、安易に物販に走らずに、もっと地道に丁寧に事業取組みの説明を尽くし・理解してもらえる先へのご提案の方法を考えようと反省していた矢先のことでした。
自分の足元と進む先の両方を見直しながら、実直に堅実に小さな歩みを続けていこう。