今月は、砂糖の歴史を簡単にご紹介します。
研究によれば、サトウキビの原産地はニューギニアあたりで、紀元前8000~1500年ごろ。歴史に残っているところでは、紀元前327年に、マケドニアのアレキサンダー大王が、インドで人々がサトウキビを栽培し、製糖する様子を発見しています。「インドには、かじると砕ける甘い石がある」という記録は衝撃的(笑)。またサトウキビ栽培は、東方・中国には4世紀~5世紀、西方・エジプトには710年に伝来しています。
日本に初めて砂糖が持ち込まれたのは奈良時代で、754年に鑑真が中国から持ち込んだといわれています。室町時代の1459年に、足利義政が茶席で砂糖羊羹(わざわざ「砂糖」と明記)をふるまったこと、1569年に織田信長がポルトガル人宣教師から金平糖を贈られたといった史料の記録から、当時砂糖は、一般庶民の口には入らない貴重な品であったことがわかります。
世界に目を移せば、1493年にコロンブスが南米にサトウキビを持ち込ました。1531年にブラジルで奴隷を使ったプランテーションが始まり、砂糖・銃・奴隷の三角貿易も相まって、生産量が飛躍的に成長しました。その後、1865年の奴隷制度解放まで続く暗黒の歴史の幕開けでした。
話は国内に戻って、製糖技術は1623年に中国から琉球に伝わっています。同じく江戸時代の1727年には8代目将軍・徳川吉宗が、琉球から苗を取り寄せ、日本国内でサトウキビ栽培を奨励します。これを受けて、四国の和三盆糖は独自の技術進化を果たしました。
近代的な精糖技術が導入されたのは明治時代で、1896年に渋沢栄一が日本精製糖株式会社(バラ印の大日本明治製糖株式会社の前身)を設立しました。現在では世界で流通するお砂糖の3割がてんさい糖ですが、このてんさいを使った製糖技術を開発したのがドイツで、1747年のことでした。
こうしたタイムスケールで眺めると、紀元前300年にすでに製糖技術を持っていたインドが、圧倒的に偉大に感じられます。